きょうのひとり飲み会

太く短くふわふわと

食品会社の監査

食品工場という組織が避けて通れないのが、監査。工場点検ともいう。

簡潔にまとめたはずがまったく簡潔ではなかった。レッツゴー。

 

工場持ってる会社と小売店が意気投合したとしましょう。

「そのサラダうちで売りたい」

「いくらでも作りましょう」

という会話が成立するとしても、だ。無条件に作ったものを売りましょうとはならないのです。

小売店の本部は工場に監査を要求します。

この工場で作ったものを売ってもよいか点数化して判断するというものです。

監査を担当するのは品質保証部。小さすぎる会社だと保証部がないので品質管理部ですね。

小売店側からチェックリストが事前に送られてきます。

項目は数十個。いくつあるかは客による。内容も客によるけどだいたい同じ。

工場見学の後に書類をチェックするという流れが一般的なような気がする。 

 

【工場見学の部】

実際に製造している現場を説明しながらお見せするというもの。

これは事前にチェックリストがあるのでそれに従って見学するんだけど、その場で相手からイレギュラーな質問が出たらさくっと答える必要がある。

例えば事前のチェックリストに「手洗い場につめブラシがあるか」という項目があったとする。現場にブラシがあれば減点はされない。しかしよくあるのは

「交換頻度は?」←リストには書いてない

などという質問が飛ぶことですね。質問自体は簡単なものだけど、ここで

「1週間ごとです」

と滞りなく回答できなくてはいけない。「えーと」とか言ったり間があったらいい印象は与えない。

いい印象を与えなかった項目は指摘される。後日報告書にまとめなくてはならないことがある。面倒くさい。

すべての項目でこういう感じではないけど気は抜けない。工場のことを熟知している必要はある。

私の頭は回転しないのでそんなんムリ。

その場では説明をただ聞いてくれる客(もちろん見学後にまとめて突っ込みが入る)、目についたものに関してがんがん質問飛ばしてくる客、デジカメで現場を押さえる客などなど。様々ですね。 

内部だけなのか、外も見るのか、客によって変わる。

外?と思うかもしれませんがこの場合は外周の植物なんかを見ます。

植物は法律や条令で植えなきゃいかんのですが、虫がつくものかどうか気にする客は気にする。

友人の工場は「全部切れ」と言われて従ったそうな。この工場、けっこう有名な会社です。

 

【書類の部】

場所は応接室とか会議室とか、それなりに広い場所を使います。

お見せする書類が膨大すぎて。。。

有効期限内の営業許可証を見せるところから始まる。

健康診断の記録なんかも見せます。

「2019年4月に××名全員受診済み」みたいな書類です。個人情報は出ませんよ。

項目が膨大だし1項目がA4の紙1枚で、3か月分見せろとなるのでファイルを何十冊と用意します。

これを前日に運ぶのはもちろん下っ端のお仕事。事務所と会場を何往復もしなくてはならん。。。

書類だってもちろんただ用意してあるだけではだめで

「秤の校正は1か月ごとに記録がありますけど、逸脱した時はどうしてます?」

とか質問は飛ぶ。

この文を分解すると

・秤の校正は記録があるか→リストにあるので事前準備可能

・逸脱した時→イレギュラーな質問

になる。これも

「業者に修理に出します、その間は予備を使います」「新しいものと交換します」

などさくっと回答しなくてはならぬ。それにしても

「あ、そうだ」

と思い出したようにリストにない書類の話をするのは止めてくれ。

事務所にひとっ走りするのは、私だ。

「新人教育の資料ってどこだった???」

と言っては短時間で探し回らなくてはならん。時間かかるとやましいことしてると思われるからね。

しかしここまではまあいい。

実際に行っていることに基づいているなら、あとは場数踏めば何とかなる。

まともな会社なら先に入社した社員が同席します。そう、まともな会社なら。

 

問題は「やっているという事実」をひねらなくてはならないとき。

こちらは必ずしも事実に基づいて監査に臨んでいるというわけではない。

「できません」「その書類はありません」は通用しない。

そんなこと言ったら他社に仕事持っていかれる。同じことやれる会社は他にいくらでもありますからね。

そのために黒いものをグレーと言わなくてはならないことが多々あってだな(この表現で許して)。 

誤解のないように断っておきますが、あくまでも企業間のやり取りです。保健所の立ち入りをごまかしているわけじゃないので法に触れてはいません。

私、誰にどのうそをついたかなんていちいち覚えてられんのよ。だからうそをつくとかその場限りで取り繕うのはやりたくない。

しかしうまく取り繕えないと責められるのは、さて誰でしょうか。

 

これらが終わると点数が出て、100点満点中90点なら取引可、80点以下はムリなどという結果が出ます。

9割以上というと厳しそうな感じがしますが、ダメな工場は監査の前の見学の場で取引しないという判断が出るので80点以下はまず出ません。

が。

これとは別に指摘事項というのがだいたいはあって、これに対する報告書を2週間後あたりに出さなきゃならんの。

工場見学も書類も完璧に準備したはずが、斜め上から質問が飛び交っていつの間にか指摘事項が膨れているのですよ。

指摘事項を改善するのはいいんだけど、取引がある限り監査は何度も行われるので次回またそこを取り繕うのはいったい誰なんだと思ってるんだ!くそー。

 

ああ、監査なんかやっていたのは10年くらい前の話なのに思い出すと昨日のことのように苦しいのは何なんだろう。

最近では賃金ちゃんと払っているかチェックが入ることも多いようですね。

待遇に不満がある人が故意的に事故を起こしたことが昔あったからだと思います。

 

次回はこの話を踏まえてどうぞ。